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テコンドーとは | 強いのか?経験者が空手・キックボクシングとの違いから解説します

世界に誇る東洋文化の発祥地、東アジア諸国
和食や中華料理、独特の建築様式。他にも日本や中国の生み出した文化の数々は、今もなお国際社会に高い評価を得ています。
それは格闘技の世界にあっても変わりません。恐らくは大昔の中国に端を発した所謂「武術・武道」の概念。
とかく「競技性」に牽引されてその本質を変えてしまうことの多い格闘スポーツの世界ですが、武道や武術の実戦を求める姿勢は今も競技者たちに忘れてはならない根源として強堅なテーマを与えているでしょう。

まあそんな中にあって、良く言って何かと奇妙な話題に飽きない国の武道があります。

大韓民国北朝鮮

今回はこの二国を起源とするスポーツ武道・テコンドーを詳細に分析します。
主にテコンドーをこれから学ぼうか考えている人にとって、有益な記事となるよう執筆させて頂きます。

1.テコンドーとは

科学の武道。パクリ空手。あるいは脚のボクシング。
至る所で妙な異名をとる武道のテコンドーですが、一体何者なんでしょうか。

一言で言います。


空手のパクリです。

パクリが変化を重ねて独自性を獲得したものです。

いきなり辛辣かもしれませんが、テコンドーを知るにあたっては第一にここを押さえておいて下さい。とても大切な事です。

テコンドーとは、第二次世界大戦後に一人の朝鮮半島出身の空手家「崔泓熙」が生み出した空手の亜流です。
もともと崔泓熙は空手を朝鮮に普及するつもりでいたが、国民の反日感情愛国心を考慮した結果、独自の武術として売り出す事にした、というのが発祥の経緯のようです。よって草創期のテコンドーは名を変えただけの空手と差異ないものでした。この時テコンドーは「北朝鮮の武術」として発生しています。

日本でテコンドーが今一栄えない、謎の格闘技のように振舞っているのはこの辺りに理由がありそうですね。武道をやるとして、テコンドーより空手を選ぶのが自然な発想です。

しかし世界的に見るとテコンドーの競技人口は空手や柔道のそれを大きく上回っています。

2.テコンドーの競技性質

テコンドーの異名に足のボクシングというものがありましたが、言い得て妙な表現です。
テコンドーには大きく分けて二つの流派があります。韓国のWTFテコンドー、北朝鮮ITFテコンドーですが、そのルールを簡単に説明します。

北朝鮮の流派:ITF

・蹴りやパンチを相手に当てると1点。
・一部の高難度な技は2〜4点。
・連続パンチは二発まで、ジャブとストレートのみ。
・本気で攻撃してはいけない。
・下半身に攻撃してはいけない。
・背面に攻撃してはいけない。
・時間までにより高得点をとった者の勝利。

韓国の流派:WTF

・蹴りやパンチを相手に当てると1点。
・一部の高難度な技は2〜4点。
・胴体、頭部に防具を付けて試合する。
・下半身に攻撃してはいけない。
・背面に攻撃してはいけない。
・顔面パンチは禁止。
・時間までに高得点を取るか、相手をKOした者の勝利。


ざっとこんなところです。
共通した大きな特徴が、ポイント制であるという事、パンチの制限が大きい事、そして安全性をとくに意識しているという事です。

ここでキックボクシングのよくあるルールを見てみましょう。

K-1ルール

・キック、パンチでの攻撃が可能。
・相手をKOするか、3ラウンド戦った後に判定で決着。


非常にシンプルです。ボクシングだとか、いま有名な総合格闘技も使用する攻撃手段は違えど同じようなコンセプトで試合を行なっています。

この違いから分かるのは、そもそもテコンドーは「強さ」を追い求めた武道ではないという事です。
テコンドーの勝利条件にKOというものが一応ありますが、顔面パンチを禁止され、そのうえ剣道以上の堅固な防具に身を包んで行う試合では、KO決着などほぼありえません。

こうして、例によって結論付ける事が出来ます。

Q.テコンドーは強いのか?

A.比較的弱い。

そもそもテコンドーは厳密には武道ではありません。跆拳道と表記するにもかかわらず武道ではありません。
正式には「武道スポーツ」であるとの事です。
何が違うの?と思われるでしょうが、これが大きな意味を持っています。
言い換えれば「テコンドーは武道の形をとったスポーツである」という事になります。本来武道であった空手からの変更点でもあります。
ようは「戦うためのもの」として設定されていないのです。


3.テコンドーで強くなれない技術的理由

「テコンドーの試合ルールが実戦的ではない事はわかった!でも本来は殴り合いの技術なんだから、しっかり学べば強くなれるんじゃないか?」

そう思った方が多いはずです。これからテコンドーが弱い理由を技術の面から紐解いていきます。

・打撃が弱い

根本的な理由はこれです。そもそもテコンドー選手はルール上強力な打撃を放つ必要がないわけですが、特に試合などで結果を出した有名選手などは正に「素早く何度も当てるための蹴り」に特化しています。腰を入れて蹴るほど、強く力んで蹴るほど、全身を連動させて蹴るほど動きは大振りになっていきますが、テコンドーはその逆を行っている訳です。
多くの場合、そういった選手が後に指導者となり若者に速く弱い蹴りを教えます。本当に強い打撃を持ち試合ルールに迎合しない、実戦的な選手は真っ先に敗北して淘汰されていくのです。
結果、テコンドーは年を重ねる毎に弱くなっていきます。

・打ち合えない

テコンドーのルールはポイント制、手技は制限だらけ。
よって試合は殆どが足による遠距離の攻防となっています。
点数の稼げない手技を学ぶより、蹴りの技術を少しでも高めた方が試合に勝てるのです。よってここでも指導の話に帰結しますが、殆どの道場ではろくに手技を学びません。ワンツーパンチを30回ほど繰り返せば満足です。
ところで知識のある方はお分かりでしょうが、ボクシングに限らず殆どの格闘技では顔面へのパンチが最強の技として扱われています。キックボクシングですら、蹴りはパンチを当てるための準備といっても過言ではありません。
その中で、ルール上手技が不必要であり、それを学ぶこともないテコンドーは弱いのです。
個人的には格闘技で最も大切な技術はパンチに対する防御技術だと思うのですが、テコンドーの場合指導者すらパンチが出来ないのだからその防御技術など学べるはずもなく、まして格闘家と殴り合うなど夢のまた夢ですね。

・なんというか型がありえない

ここは特にITFテコンドーの話になりますが、これはもう...本当に、なんというか型がありえないんです。
型とは何か、ようは踊りのように決まった動きを繰り返す練習です。一人でパンチ→キック→何やらと、同じ動きを繰り返していれば対人戦の場でも同じように動けるはず、という趣旨のものです。
どんな武道にもだいたい存在する「型」ですが、テコンドーのそれは馬鹿馬鹿しいにも程があるというか、ふざけているとしか思えないんです。これは4番で詳しく説明します。
動画のURLを載せておくので見て頂くのが早いと思われます。

『Do-san tul』https://m.youtube.com/watch?v=WqUy-MeFSJs
『Chon-ji tul』https://m.youtube.com/watch?v=pRbmNys1tKI&list=PL922645D8CA319CEA&index=4&t=0s

・妄想の科学

最後に、テコンドーの持つ最大の特徴として、「サインウェーブ」という考えがあります。
高校卒業者ならなんとなく察しがつくでしょうか。
数学の三角関数などに出現したsin、ようは正弦波です。これを殴り合いに応用しようというのです。


一体どんなインテリかと思いきや、実際には拍子抜けです。簡単に説明すると
「正弦曲線のようにふわんふわん上下しながら攻撃する事で、落下の力を攻撃の威力に加える事ができる」というものです。
意味わかりましたか?
ようはうんと背伸びして、そこから身体を落としながら相手を蹴ったり殴ったりすれば、重力が加算される分強い攻撃を放てるというのです。これをテコンドー最大の武器として、型や板割りなどあらゆる場面で修練します。



もはや馬鹿としか言いようがありません。
創始者はこれをもって「テコンドーは科学的な武道である!」と息巻いていたようですが、なんとも。
彼に聞きたい。

ベクトルの分解って知らないですか?

高校物理基礎やってますか?

恐らくはないでしょう。

まあ気持ちは分かるんですよ。確かに背伸びから落ちながらパンチを打つと、「なんか強くなった感」が味わえるんです。これは落下の衝撃が全身に伝わっているのをパンチの威力だと勘違いしているんです。

しかも創始者は「サインウェーブの発見によって空手の6倍の威力を生み出すことに成功した!」とほざいたらしいです。

いやあ〜。
実際には目一杯多く見積もって0.7倍くらいでしょうか。
あと背伸びしているうちに殴られますよ。
むろんこの馬鹿げた理論を試合に使う選手は皆無です。

という事で、以上がテコンドーが弱い技術的理由でした。次の項から唐突ですが、テコンドーの良さを語っていきます。

4.テコンドーの強み

テコンドーが弱い弱いと言い連ねましたが、ただ弱いだけではここまで世界に名だたる一大スポーツとして発展しているはずがありません。テコンドーにはある強力な武器があります。
それが「変則技」です。

かかと落としや跳び後ろ蹴り、旋風脚などまるでアクション映画のように派手な技の数々をテコンドーは持っています。
よく見栄えがいいだけの踊りだと言われるこれらの技ですが、実は中々馬鹿に出来ないんです。

というか明らかに強いです。

K-1アンディ・フグUFCチャンピオンのアンソニーペティスなど、テコンドーをプロ格闘技に有効活用した選手も多く、実績も十分。

今強くなりたい人がテコンドーを学ぶ理由といえば、これが大きいと思われます。


【2019】衝撃ノックダウン KO集【キック】2019 KICKBOXING BEST KNOCKOUTS MUAITHAI HIGHLIGHTS
https://m.youtube.com/watch?v=4R6eDwl_DrY

5.テコンドーと空手、どちらを学ぶ?

これは難しい話ですが、一般に空手として扱われる4大流派、いわゆる寸止め空手と比較するならテコンドーの方が優れています。
寸止め空手とはその名の通り、攻撃を寸止めする空手です。相手に一切のダメージを与えないんです。さらに攻撃の差し合いをするたび逐一仕切り直しをします。ここを知らずに空手を始めてしまう方がいますが、よく考えてください。もちろん安全を期するなら空手がより良い選択です。
強くなりたいならば、そういった古い空手に対してテコンドーは幾分か優れています。審判の頻繁な介入もなく、寸止めでもない。とくにITFテコンドーは顔面パンチもあり空手に比べると圧倒的に強いです。

しかしたんに強くなりたいというならば極真空手新空手に代表されるフルコンタクト(=本気で殴り合う)空手を学ぶべきでしょうし、究極的に言えば競技人口や規模が圧倒的な現代格闘技、つまりキックボクシングや総合格闘技を選ぶのがベストなわけですからやはり難しい選択です。


6.総括

辛辣な話もありましたが、試合もあり強力な技もありと、少林寺拳法合気道に比べると明確に強く優れた武道であることは否定のしようがありません。
スポーツや運動不足解消、路傍の喧嘩や護身術としてなら十分。格闘技としてもキックボクシングなどを習得した上で学ぶなら非常に有用な技術ばかりです。
昨今の複雑な文化事情もありますが、個人的にはおすすめの武道の一つです。
以上、テコンドーの分析でした。